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zoom RSS 【神風特別攻撃隊】  婚約者への遺書

<<   作成日時 : 2013/10/10 16:08   >>

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【神風特別攻撃隊】  婚約者への遺書

「二人で力を合わせて努めて来たが終に実を結ばずに終わった。
希望も持ちながらも心の一隅であんなにも恐れていた時期を失することが
実現して了つたのである。

去月十日、楽しみの日を胸に描きながら
池袋の駅で別れたが、帰隊直後、
我が隊を直接取り巻く状況は急転した。

発信は当分禁止された。
転々と処を変へつゝ多忙の毎日を送った。
そして、今晴れの出撃の日を迎へたのである。
便りを書き度い、書くことはうんとある。

然しそのどれもが今迄のあなたの厚情に
御礼を言ふ言葉以外の何物でもないことを知る。

あなたの御両親様、兄様、姉様、妹様、弟様、
みんないい人でした。
至らぬ自分にかけて下さった御親切、
全く月並の御礼の言葉では
済み切れぬけれど
「ありがたうございました」と
最後の純一なる心底から言っておきます。

今は徒に過去に於ける長い交際のあとをだどりたくない。
問題は今後にあるのだから。
常に正しい判断をあなたの頭脳が与へて
進ませてくれることゝ信ずる。
然しそれとは別個に、婚約してあった男性として、
散ってゆく男子として、
女性であるあなたに少し言って往きたい。

「あなたの幸を希ふ以外に何物もない。
徒に過去の小義に拘る勿れ。
あなたは過去に生きるのではない。
勇気をもつて過去を忘れ、将来に新活面を見出すこと。

あなたは今後の一時々々の現実の中に生きるのだ。
穴沢は現実の世界にはもう存在しない。
極めて抽象的に流れたかも知れぬが、
将来生起する具体的な場面々々に活かしてくれる様、
自分勝手な一方的な言葉ではないつもりである。

当地は既に桜も散り果てた。
大好きな嫩葉の候が何処へは直に訪れることだらう。
今更何を言ふかと自分でも考へるが、
ちょっぴり欲を言って見たい。

1、読みたい本   
「万葉」「句集」「道程」「一点鐘」「故郷」

2、観たい画    
 ラファエル「聖母子像」芳崖「慈母観音」

3、智恵子。会ひたい、話したい、無性に。
  今後は明るく朗らかに。

自分も負けずに朗らかに笑って往く。

昭和20.4.12  

智恵子様


穴沢利夫


福島県中央大学 特操一期 第20振武隊 
昭和204月12日出撃 戦死 少尉 23歳

※ 合わせてコチラもご覧下さい。
http://nezu621.blog7.fc2.com/blog-entry-1687.html


ねずさんの ひとりごと 会ひたい、無性に 穴沢利夫大尉
nezu621.blog7.fc2.com
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